スチャダラパー30周年、そして30周年記念盤「シン・スチャダラ大作戦」発売おめでとうございます。5月1日「スチャダラパー30周年記念公演 スチャダラ2020″アメージングヒューマンレガシー”」のNHK大阪城ホールでのライブのチケットも取り、航空券、ホテルも予約していましたが、さすがにコロナのアレはアレで延期ぽいので、長い間僕らを楽しませてくれたことへのお礼の意味もこめて、新作の全曲解説をしてみます。まあ、サンプリングネタやサウンドやラップのテクニックとかについては特になく余談多めですが、よければお付き合いください。
「ミクロボーイとマクロガール 」、「セブンティーン・ブギ」 、 「その日その時」、「サマージャム2020」は17年4月の「スチャダラパーライブ 2017年 野音の旅」で発売され、その後ライブ会場限定で発売されたCD「セブンティーンEP」に収録。「スチャダラパー・シン・グス」 、「春マゲドン」 、「やっぱりひねくれたいの feat. ロボ宙」は18年4月野音での恒例のライブイベント「スチャダラパー・シングス」で発売され、その後ライブ会場限定で発売された同名CD「スチャダラパー・シングス」に収録。単独ライブではすでに多数披露され、ファンにはおなじみとなったナンバーです。
1. イントロダクシン
まずはご挨拶変わりの「シン」縛りのタイトルをつけたインストナンバー。もちろんシンコの「シン」もかかってるんでしょうね。ちょっとゲーム音楽ぽさもあり、トリッピーでかっこいい。いつかシン・コのマシンが震源地のソロアルバムも聴いてみたい。
2. シン・スチャダラパーのテーマ
4月5日(日)深夜に、スチャダラパーからのライムスター「Forever Young」 ~まだイケる!まだまだイケる!朝まで生ラジオスペシャル~、という番組がありました。学生の頃はオールナイトニッポンなど深夜ラジオも聞いていたけど、さすがに初老には夜更かしは堪えるので、radikoのタイムフリーで聞きました。その番組の初オンエアーでこの曲をはじめて聴いて、フルではなかったけどヤバさはビンビン感じました。「ライツカメラアクション」あたりに通じる二枚目半のかっこいい感じ。ちょっと仲間のTOKYO No.1 SOUL SETにも通じる哀愁メロディー、「ドリジナルコンセプト」などでも見られた「シン」縛りによる言葉遊び、そして「彼方からの手紙」から脈々と受け継がれる淡いサイケデリア。それらを見事にミックスしてアップデートした30周年に相応しい名曲だと思います。アルバム発売前にほとんどの曲を聴いていましたが、この曲のためだけに買ってもいいと思えました。
3. スチャダラパー・シン・グス
2017年年末恒例のリキッドルーム「暮れの元気なごあいさⅢ(KGGⅢ)」の時に、18年春の野音ライブのタイトルが「スチャダラパー・シングス」と発表されました。それまで「ストレンジャーシングス(以下ST)」ももちろん未視聴、NETFLIXにも登録していませんでしたが、春の野音までに予習しておかなければ、とその後一気見しました。しっかりSTにもはまっていたので、野音ライブの一曲目にこの曲が演奏された時には「なんてかっこいい曲なんだ!」と興奮しました。STのサントラからインスパイアされたイントロも印象的なサイケデリックなトラックにストレンジャーな自分たちのことを語ったようなリリックがはまっています。特に「引き継ぐ思想”そこがいいんじゃない” “でもやるんだよ”で行くしかないんじゃない」というみうらじゅんと根本敬という先立二人の名言を引用しているのは、グッときますね。そしてアルバム収録に合わせてタイトルも「シン・グス」と刻んで、トラックも「シン」ミックスさせた芸の細かさもさすがだな、と。
前述の野音ライブ「スチャダラパーシングス」の時の話しに少し戻りますが、当日僕はストレンジャーシングスのTシャツを着ていっていたら、ステージからBOSEが「ほらTシャツ着てる人いるでしょ」と指さしながらいじってくれて嬉しかった。それと、アンコールの一番最後が、STシーズン2のよい場面で使用されていたPOLICEの「見つめていたい」と「彼方からの手紙」のマッシュアップで、失禁もののかっこよさでした。
4. ミクロボーイとマクロガール
長年仲がよいエゴラッピンとの初コラボ。カップリングが「サマージャム2020」の7インチ、のんが主演したPVも話題になりました。トリッピーなラップパートと伸びやかなよっちゃんのサビの対比が素晴らしい名曲で、何度か地上波への出演もありテレビでスチャが見れて嬉しかったですね。
17年の「暮れの元気なごあいさⅢ(KGGⅢ)」ではEGO WRAPPIN’が登場して、この曲からのブギーバック。そのライブが素晴らしく、EGO WRAPPIN’のこともいままで以上大好きになり、19年のDREAM BABY DREAMツアーの熊本公演にも足を運びました。18年の野音「スチャダラパー・シングス」にはEGO WRAPPIN’は登場せず、よっちゃんパートを観客に歌わせてプレイしたのですが、結構みんな歌えて新しい曲なのにすでに愛されてるな、と僕も嬉しくなりました。夕暮れ時にとても気持ちがよかったです。
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5. セブンティーン・ブギ
17歳だった80年代の情景と、もしも現在17歳だったら、という2つの場面をキャッチーなトラックに乗せた、一見そうは見えないけど、実はめちゃくちゃ凝ったスチャダラパーらしい1曲だと思います。「やってくきゃない今学期」が最後のパートでは「やってくきゃない今世紀」になってるとことか痺れます。あとは「スチャダラパー・シン・グス」同様「みうら氏 久住氏 根本氏 とっくに 降臨 サブカルビッグスリー」と先立へのリスペクトが表明されているところもいいですね。
6. ヨン・ザ・マイク feat. ロボ宙 &かせきさいだぁ
おなじみのロボ宙とかせきさいだぁをフィーチャーした、テレビ東京「フォーカード」のED曲。それぞれのカラーをリリックで出したマイクリレーとパッパラ・コーラスで盛り上がるパーティーチューン。かせきのこのリリックは本当アホみたい(Ah Hold me tight)ですね(褒め言葉)。トラックもシンプルなようで、間奏のキーボードとホーンとかPRIMAL SCREAMのLOADEDみたいでめちゃくちゃかっこいい。何の曲からのサンプリングだろう?
7. その日その時
電通「+ソナエ・プロジェクト」のために書き下ろした防災ソング。いつになく生々しい内容のラップながら、きちんとオチをつけるところがさすがですね。06年のアルバムCON10PO収録の「ソング・オブ・ザ・ヒル」の続編のようになっていて「タンスを留めとくL字のアレ」や「震えて待ってるXデー」がセルフサンプリングされていて、ファンならニヤリとさせられます。この曲は3.11について歌われていますが、その後僕らは熊本地震を経験して、いま現在コロナ禍の真っただ中、そういう状況でまた違って聞こえる1曲ですね。
8. 春マゲドン
1980年代あたりから見た世紀末観と3.11以降の終末観をミックスさせたようなちょっとシリアスなナンバー。11収録のANTENNA OF THE EMPIREやHELLO WORKSでの活動でも見せた「異議アリ」感もばっちり注入。僕も小学校低学年の時に祖父のガラクタ置き場で見つけた「ノストラダムスの大予言」読んで、俺27歳で死ぬんだ、と怖かったので、このちょっとおどろおどろしいサウンドを聴いて当時の気持ちを思い出しました。でも、最後の「ハルマゲドン」から「ミソカツドン」までの連呼で、本当にくだらねぇな、と正気に戻ることができます。ノストラダムスの大予言の作者は五島勉(ごとうべん)なんですが、歌詞では「ゴシマベン?」となっていて、これ単なる間違いじゃなく、前に「なんつったけ?」もあるしわざとそうしたのなら、本当にぶっ飛んだリリックの書き方だな、と思います。真偽不明。
9. やっぱりひねくれたいの feat. ロボ宙
neco眠るのアルバムTYPICALにも収録されて、7インチでシングル化もされたロボ宙も交えたコラボ曲「ひねくれたいの」 をスチャダラパー・バージョンとしてセルフリミックス。タイトル通りヒネリの効いた曲展開とオリエンタルなバンドサウンドがマッチしたオリジナルバージョン、ブレイクビーツを加えファンキーに仕上げたこちらのバージョン、どちらもグッド。From喜怒哀楽からのサンプリング、はじめて聴いた時は声だして笑いました。
10. サマージャム2020
前述したとおりに17年の「セブンティーンEP」に収録されていたので、サマージャム2017じゃないの?って思ってたけど、すでにその時から20年のアルバムに収録するつもりだったのね。さすが用意周到です。「ミクロボーイとマクロガール 」とのカップリングで収録されたバージョンの歌詞は暑くて大変だから外に出たくないので「自宅だーいすき」なんだけど、夏フェスで合唱できるよう「夏大好き」に変更してある。こまかなところも語感はほぼ変えずにいじってあり、歌詞を見比べてみると、その芸の細かさに鳥肌が立ちます。実際夏フェスで「サマージャム95」から2020に繋げ、オーディエンスを盛り上げることも多いし。サマージャム95はもちろんクラッカーMC’Sからのセルフサンプリングや、健康ボーイズの「正解!」のサンプリングもあり。そして「って終われないよ!それどんな感性?」のところはいつも笑ってしまう、オモロラップ2020な名曲です。
11. マイ レギュレーション
ゲーム「ミニ四駆 超速GP」のために書き下ろした新曲。「ヨン・ザ・マイク」に続いて公開され、絶好調ぶりがわかり、新作が傑作なのを確信しました。この曲はとにかくトラックがかっこよすぎて、youtubeを何度もリピートしました。シンコ節全開のいびつなファンキービートが超DOPE。でもラップが乗るとキャッチーに聴こえるから、本当に凄いグループです。以前BOSEもインタビューで「SHINCOっていう、ものすごい曲を作る才能に対して『こんな風に表現したら、もっと伝わらない?』って、翻訳しているような感じ」って語っていましたが、全くその通りの神曲ですね。ちなみに、スチャダラパーにチャレンジできるゲーム「ミニ四駆 超速GP」のほうもムスコが楽しそうにやってました。
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12. Forever Young/スチャダラパーからのライムスター
アルバムのハイライトとなる、ほぼ同期のライムスターとのコラボ曲。押しつけがましさの無い応援ソングと言う感じのパーティーチューンでいいですね。当たり前だけど、ライムスターもめちゃくちゃラップが上手い。あと老人化したPVも面白いし、シンコの本物感にシビれました。前述の深夜ラジオで貴重な話もたくさん聞けたので、気になる方はタイムフリーで聞けるうちにどうぞ。
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13. 帰ろうChant
スチャダラパーが音楽演出をプロデュースしているバスケットボール・チームの川崎ブレイブサンダースの試合終了後の客出しの時に流れている楽曲。単独ライブのアンコールの最後にプレイされることが何度かあり、めちゃくちゃかっこいいので、早く音源化されないかな、と期待していたので嬉しい。アルバムの〆に相応しい、ハートウォーミングな名曲。
今回の新作はジャケ違い、特典CDの内容違いの3種展開。3種大人買いしたかったところですが、コロナで先が見えないこともあり、まずはジャケがよいのと、特典CDに大好きなLET IT FLOWが収録されていたので、P(パーフェクト)盤を購入しました。これからも、後のキャリアの布石となるよなスタイルやフレッシュなアイデア、を提示して、40年、50年と僕らを楽しませてください。